シニア市場の拡大と経済の衰退

 これからの経済は、少子高齢化をぬきにしては語れないとされている。そして日本をトップランナーとする少子高齢化の波には、世界にひろがり、世界経済の行方もこのインパクトを抜きにしては語れないとか。
 一人の高齢者や子供を、何人の勤労世代で支えるかを示すのが「生産人口比率」である。勤労世代が増えると上昇し、少子高齢化にともなって低下するこの指標と、不動産価格の趨勢が一致するという。日本は1991~93年に、アメリカは2005~08年に生産人口比率のピークを迎えた。いずれも、不動産バブルの頂点にほぼ重なる。
 勤労世代が多い国、地域、時代は、住宅需要も強く、地価などに上昇圧力がかかる。それが過大な投資を誘発し、バブルの一因となったとか。自動車や家電の需要も、勤労世代が多いほど増えやすいのは当然である。これが「スペンディング・ウェーブ(支出の波)」と呼ばれる現象である。

 逆に、少子高齢化は、その反対。地価の下落圧力となる。また、モノの消費を抑える。働き手の減少も深刻となる。人口要因がボーナスからオーナス(重荷)に転じるわけだ。これは、医療や介護といったサービスの消費を促す方向に働くが、製造業からサービス業へのシフトが生産性の低下をもらたす「ポーモル効果」が生じやすくなるとされる。

 今、世界の成長センターとされるアジアも、この少子高齢化の影響から逃れられない。中国の生産人口比率は14年、韓国やタイなどは15年ごろにピークに達するとされるが、あとはピークアウトするだけだ。ハーバード大学のブルーム教授によると、「東アジアの奇跡と呼ばれた経済発展の多くは、人口要因で説明できる」とか。

 世界経済の一方の雄となった中国であるが、問題はおおいとか。いわゆる「中所得国のワナ」論である。途上国から中所得国(一人当たりGDPが4-5000ドル)への離陸は、とても大変だが、そこから高所得国(10000-15000ドル)になるのは、もっと難しいとされる。
1960年時点で中所得国は101カ国あったとされるが、2008年時点までに高所得国になったのは、13カ国に過ぎない。日本・韓国・台湾・香港・アイルランド・イスラエル・シンガポール、その他などの国だけなのである。アルゼンチン・イラン・ヨルダン・マレーシア・ブラジル・ペルー・タイなどは、高所得国になりそこなたわけである。
 中国が安い労働力をつかって経済発展した時代はおわり、高所得国に飛躍するには、経済効率を更に高めねばならない。だがもう目前の14年から15年には、生産年齢人口(15~64歳)が天井を打つ。おそらく中国は「中所得国のワナ」から抜け出せないとみなされている。

 だが、先進国の恐怖は「日本化」であるとされる。日本においては経済は成長することを止めた。借金の山をつくったまま、国は老いる一方である。この傾向は、じわじわと主要先進国を侵食しつつあるとか。つまり「高所得国のワナ」もあるわけだ。

 そのような、これからの時代に、わが社は介護事業者として、老人ホーム事業者として生きてゆくわけである。少子高齢化のボーモル効果により、製造業からサービス業にシフトされ、とくにシニア市場が拡大されるわけだが、介護事業者も老人ホーム事業者も、どのサービス業も、活発な製造業などの産業なくして、これは成り立ちにくい。シニア市場は、あくまでサービス業であり、生産業ではない。「富」を創出しない。経済の柱には成り得ないのである。
 それどころから、最近のサンフランシスコ連邦銀行のレポートは「46~64年に生まれたベビーブーマーの引退が、株式市場の逆風になる」と論じる。地価や株価の下落圧力、そして成長鈍化の圧力にさらに晒されるとか。
 これらは、一ホーム事業者が考えてもどうになることではないが、わが社は、今ホームをさらに数棟、開発しようとしいる。業界の大手他社は、フルアクセルを踏み続けている。だが、他社は他社、わが社は、ホームの「最適」数と開発の「見切り」を考えねばならない時期である。

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