あちらこちらに秋の風、いづこも同じか

この日乗を読み返してみると、一年前はずいぶんと経済問題に気を取られていたようである。アベノミクスという経済実験がどうなるかが興味の中心だったが、いろいろな経済学者がその効用を論じていた。しかし「経済学とは、よく言って見事なまでの役立たずで、悪くすればはなはだしく有害なもの」ともいわれる。その通りだった。
海外旅行好きとしては、「円」の値打ちが露骨になくなるのが痛いなあ。その都度、今、替えておこうか、つぎまで待とうか考えるが、行くたびに安くなっている。だが、「円」は日本の顔であるが、その値打ちを下げるのに汲々とする政府とは、さてなんだろう。円安などという発想は、後進国や中進国のレベルのことであり、まずは経済失政やなあ。

大阪の事業者としても電気料金が問答無用で一割アップされたり、諸式物価が上がる。国内業者にはつくづく迷惑な話であるが、では、マクロではどうなったのか?

先週の雑誌の藻谷氏記事によれば、今年上半期の数字から試算すると、今年の貿易赤字は十数兆円に膨らむ。鳩山政権の2010年には10兆円の黒字、野田政権の2012年が4兆円の赤字であるから、日本はすごい勢いで貿易黒字国に転落している。日本は対中貿易で、鳩山政権当時は4兆円近い黒字を稼いできたが、それが安倍政権の昨年は1兆円の赤字に転落した。アベノミクス以降、日経平均は9割上昇したが、国民や中小零細企業の大多数は円安で経費がかさむだけで、なんの恩恵も受けていない、その他。原発を止めたから、火力発電所の石油輸入が増えて貿易赤字国になったという「新原発神話」についても、原発事故以前も以後も、石油や天然ガスの輸入量は2億5000klと横ばいで増えておらず、自分て円安にして日本を大赤字国にしたあげく、原発を再稼働せよというのは、相手を転ばせて怪我をさせておいて、さえクスリを買え、というようなものだと氏は説く。

1年前に、この経済実験のはじまりの時期に、さてどのうよな国家的人体実験の結果が出るか、その経済論争に興味津々であったが、予想通りのつまらない結果になり、いささか熱が冷めた。三本の矢の話も、もう聞かなくなったなあ。われわれ事業者は親亀の背中の子亀であり、とくに介護事業者は社会保障制度という親亀の背に乗っかっている。1年前は安倍政権の失敗を予測していたが、できれば成功してほしかったものであるが。
こんど海外旅行をするときは、現地通貨を多めに買っておく程度の打つ手しか無いか。

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