扁桃体至上主義 その10

小学校や中学校の通信簿には、科目ごとの教師コメント欄があった。算数・数学では「直観力にすぐれている」という評価がよくあった。9月15日、Wat Mahadhatu横のスターバックスで思いいたったのは、最近の脳科学によれば、脳は特定の瞬間だけみるとある瞬間に30%ぐらいだけ、ニューロンは動いているそうだが、瞑想により脳を活動させない、30%を20%するのだ、と気づいた。「脳を働かせないことで、疲れた脳を、管理的に休ませるのだ」という、脳のアクセルをゆるめることだと直感した。人間は、つねに考えつづける。ニューロンの動き、脳の働きをオフにはできない。だが、その動きをシンプルな、シンプルな動きにスリップさせることで、ニューロンの動きを最小限にし、脳のほかの「野」を休ませる。脳の動きを「止滅ではなく休止」させることで、脳の疲労の回復をはかる。新しい脳内システムを組成する。そうスターバックスでカフェラテを飲みながら、思いいたったのだった。

以後二か月、漠然とその「直感」を反芻していた。「扁桃体至上主義」と称しているこのノートは、「直感」でだした答えを「式」に整理する作業、お勉強ノートであり、思考の流れを言語化して、答えを洗い出すことだった。そして、濫読の結果、どうやら「解答式」を得たようだ。

熊野宏昭氏『マイドフルネス最前線』によれば、脳のネットワークには3つあり、注意とか知的活動のセントラル・エグゼクティプ・ネットワーク、何もしていないときのアイドリング状態のデフォルトモード・ネットワーク、その二つが切り替わるときに、目立つ刺激に気づくセイリエンス・ネットワークがあるらしい。そして瞑想のときは、デフォルトモード・ネットワークが働きを落とすらしい。

同様のことは、アメリカで精神神経科の臨床医をしている久賀谷亮氏『最高の休息法』も述べる。
イェール大学での10年以上の瞑想経験のある人を対象にした研究調査で、マインドフルネス・セッションでの脳活動を測定すると、内側前頭前野と後帯状皮質の活動の低下が認められるという。これらの部位は記憶・感情などに加え、デフォルトモード・ネットワーク(DMN)を司る部位でもある。これは、意識的な活動をしていないときに働く、いわば脳のアイドリング状態である。また、デフォルトモード・ネットワークは「心がさまよっているときに働く回路」として知られるが、脳というのはやすむことなく、つねに動いていようとする臓器らしい。人間の脳は、なんと一日のおよそ半分以上は、心がさまようことに費やしているらしい。さらに、このデフォルトモード・ネットワークのエネルギー消費量は、脳の全エネルギーの60~80%を占めるとされる。ここに脳の疲れの正体があり、デフォルトモード・ネットワークは大食漢なのである。脳を休めたければ、エネルギーの浪費家であるデフォルトモード・ネットワークを使いすぎないようにせねばならないが、マインドフルネスに習熟すれば、その要である内側前頭前野と後帯状皮質の活動を抑えることができる。つまり雑念が脳のエネルギーを無駄遣いすることをふせぐことができる、と述べる。

9月15日、Wat Mahadhatu横のスターバックスで思いいたったのは、最近の脳科学によれば、脳は特定の瞬間だけみるとある瞬間に30%ぐらいだけ、ニューロンは動いているそうだが、瞑想により脳を活動させない、30%を20%するのだ、と気づいたことである。「脳を働かせないことで、疲れた脳を、管理的に休ませるのだ」ということだが、熊野氏と久賀谷氏の本に、その仕組みが書いてあることを発見した。カフェラテを飲みながらひらめいた「直感」は、正しかったようだ。

答えが出て、気持ちがすっきりしたし、副次的に、この二か月は最新の脳科学についてずいぶんと勉強した。そして、自分が何者かも、またこのような切り口で考えることができた。さて、小休止。数ヶ月後か、半年後か、もうすこし知識を深めて、わたしの脳の新しいニューロンの回路が成長してから、この問題を再度考えてみようか。

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