出雲駅伝の頃に

一昨年の6月、この出雲平野を見下ろす山に、年少の従兄弟である彼と上った。がんを乗り越えたと思ったが、4か月後、出雲駅伝の頃に西に旅立った。家族にぜひにとこわれ、一周忌に生まれ故郷の出雲にもどる。でも、空もかわりなく、地上では稲穂が波うっていた。一昨年と何も変わらない。

吉永小百合が主演した実話をもとにした映画、骨肉腫で若くして死んだ女性の日記と手紙をもとにした『愛と死を見つめて』という映画があった。名コピーだった。人間には見つめつづけられないものが二つある。それは太陽と、そして死である、だった。私たちは、自分にはそんなことは起こらない、それは存在しないとして、日々を生きるしかない。誰も、それに直面はできない。その意味では、九歳の子も、九十歳の人も、彼の家族も、道を歩く人も、今、この瞬間、みな同い歳である。そして永遠に同い歳である。
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彼の兄に、がんが発見された。かなり重い。生きているうちにと、先週金曜日、ビールをともにする。つまらない与太を言い合うが、誰にも覚悟が必要だが、しかし百年後は誰も、誰一人いない。われわれは、永遠に同い歳である。避けることはできない。受け入れることは、さて、できるだろうか。

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