偏桃体至上主義 その5

3つのキーワードを抽出した。「左扁桃体」「右偏桃体」「前頭葉前野」である。

うつ病の研究によれば、うつ病者の脳は、比較的本能に近いところをコントロールする脳幹部分にある恐怖や不安を感じる「扁桃体」部分が暴走している状態との事である。そこを、思考を司る「前頭葉」部分が脳幹の本能部分で感じる恐怖や不安を制御すればうつ病は発症しないらしい。つまり「前頭葉」が「扁桃体」の暴走を抑制するのである。

パニック障害においても、そのようだ。以下は、エビデンスとして大分大学医学部精神神経医学講座WEBよりの引用。

パニック障害は、脳内の恐怖の神経伝達系の脳内サーキットに異常があると考えられています。この中でも不安・恐怖で中心的な役割を果たしている扁桃体の異常が指摘されています。扁桃体は、大脳辺縁系といって古い脳に属し、大脳新皮質から間脳および脳幹との間のインターフェイスとして重要な働きをしています。扁桃体は、恐怖の対象に対して攻撃するか逃避するかの二者選択から反応して脳内の主要な領域に緊急信号を送ります。たとえば目の前に蛇がいると目から入った視覚刺激は、視床から大脳新皮質の視覚野(後頭部)を介して扁桃体に入る経路と視床から直接扁桃体に入る経路があります。前者の経路は、大脳新皮質で恐怖な対象か否かを判断します。後者の経路は、判断という認識なく直接反応します。扁桃体は、不安や恐怖そして自律神経反応である過呼吸・動悸・発汗などを症状として示します。恐怖がなくなると、大脳新皮質(前頭葉)は危険が去ったことを脳の各部位に知らせます。パニック障害では、扁桃体の異常と同時に大脳新皮質(前頭葉)の危険解除がうまく働いていないと考えられています。この状態は、車の運転に例えられます。すなわちアクセルを踏みっぱなしの状態が扁桃体の異常な状態で、ブレーキが故障して効かない状態が大脳新皮質(前頭葉)の扁桃体抑制不能状態と考えられます。パニック発作は、恐怖を目前にした時のヒトの反応によく似ています。この時ヒトは、恐怖の対象と戦うか(fight)逃げるか(flight)の二者を選択します。このうち逃避は、パニック発作の様々な症状と類似の症状を示します。上記の扁桃体は、パニック発作を起こす脳の中核でありますが、この症状をいかに押さえ込むかが前頭葉の重要な役割であります。

ようするに、フロイト的に考えなくても、脳の構造を考えるなら、人には二つの心が存在している。一つは「前頭葉」を中心とする意識的な、判断可能な心として存在し、もう一つは「扁桃体」を中心として存在する、意識に上らない、情動の心である。われわれ人類は10万年以上かけてみずからの遺伝子を進化させてきたが、人類にとって、今のような安全な社会はわずか文明発祥の4000年くらい前からである。それまでは、自然に対しても、他の生物に対しても、あるいは人間同士に対しても、逃走するか攻撃するかの二択しかなかったのだ。生命存続のためには、つねに不安であり、つねに疑い深く、つねに恐怖を感じつづける必要があったのだ。他者を疑い、生き残り、食べ、性交する、それが情動の心、「偏桃体の心」である。

また、生後まもない時期の大脳新皮質は発達途上であるのに対して、「扁桃体」は誕生の時点でかなり発達しており、生後まもなく完成する。幼少期には「扁桃体」と「海馬」はそれぞれ独自に記憶するため、「扁桃体」完成前後の3歳くらいの幼児体験が後々の情動反応に強く影響を及ぼすとも考えられている。個々の遺伝子と個々の幼少期体験やその後の辛い情動体験、怖い情動体験などにより、その人なりの「扁桃体の心」がつくられるらしい。わたしが、あなたが、彼女が、彼が、である。

さて、3つのキーワード「左扁桃体」「右偏桃体」「前頭葉前野」を素材として仕入れたから、お料理の時間である。

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