ホームの一つを売却する。地震でやられ築三十六年を買って改装、七年目の建物は大雨でさらにダメージをうけた。建て替えも考えたが、問題はわたしの年齢である。やめた。売ろうじゃないか、ついでに会社もだ。二億の利益をだし、さらに三億のオーナー資産蓄積のできる素敵な会社だ。売ろうじゃないか。
でも、まだ金利動向が気になる。低金利で借り入れてホームオーナーになるモデルだからだ。これを確信犯的にしているのは、日本でわたしだけだろう。だが、何年前から直感的に確信していたが、いま日本で行われているアベノミクスなる愚行は必ず破綻する。いま景気はどうにかもっているが、それをアベノミクスのおかげとするのは早計。「デフレ脱却」を掲げたアベノミクスが想定するプロセスは効いていない。それどころか、国債と称する借金をためらいなくつづける姿は、異常だ。個人なら多重債務者として破産する。「円」という「紙」を刷り続けることで、その場しのぎをしている。そこで「東洋経済」誌を読んでいると腑に落ちる記事があった。
2018年6月の消費者物価上昇率は、生鮮食品を除くコア指数で0.8%だが、さらにエネルギーを除くコアコア指数は0.2%にすぎない。「2%物価目標」にはほ ど遠いうえ、消費者物価上昇率を押し上げているのは、トランプ大統領のイラン制裁の伴う石油などエネルギー価格の上昇が原因であり、日銀の金融緩和の効果ではない。たしかに、ジャブジャブの異次元金融緩和で倒産件数は減っている。だが、それによって新しい産業が生まれているわけではない。
有効求人倍率の上昇は生産年齢人口(15~64歳)の減少の影響が大きい。「働き方改革」でも裁量労働制や高度プロフェッショナル制度に関する恣意的データが作られたように、自らに都合良い数字を並べ立てているだけで、実質賃金の低下と労働時間強化は改善される見込みはない。
● アベノミクスによる 「見せかけの好景気」は破綻する
結局のところ、アベノミクスのもとの「好況」は、円安誘導や赤字財政のファイナンス、日銀の株買いに支えられた「見せかけの景気」にすぎないのだ。
そのことは実体経済でも同じだ。製造業では、中国のハイテク化とともに中国への素材部品や半導体製造装置などの輸出が伸びていることで、景気はどうにかもっている。しかし、これは当初のインフレターゲット派の想定するプロセスと違って、従来からの円安誘導による既存産業の輸出にすぎない。しかも、米中貿易戦争の悪影響が懸念され、いずれ中国自身が自前で生産するようになるだろう。
自民党総裁選では、経済や雇用指標の「改善」などを背景に、安倍首相の「3選」が有力視されている。しかしアベノミクスがあと3年続くと、どうなるのか。異次元緩和にとって金利上昇がアキレス腱である。そして、すでに米国が利上げに転じている中で海外から金利上昇圧力がかかってきて、限界が露呈し始めている。2016年10月に公表された財務省の試算によれば、金利が1%上昇すると、国債の価値が67兆円毀損する。日銀も24兆円の損失を被る。日銀も年金基金も金融機関も潜在的に膨大な損失を抱えて動きがとれなくなる。さらに2017年1月の財務省の試算によれば、金利が1%上昇すると、国債利払い費を含む国債費は3.6兆円増え、金利が2%上昇すると7.3兆円増加する。長期的に考えれば、国の借金は1000兆円を超えるので、単純計算で考えても、金利1%の増加でさらに国債費は膨らみ、財政危機をもたらす。
つまり、金利の上昇は財政金融を麻痺させ、ひいては日本経済を著しい混乱に陥れるのである。だからこそ、異常な低金利を維持するために、日銀は永遠に国債を買う量的金融緩和をやめるにやめられず 、出口戦略を放り投げて続けざるを得ないのだ。簡潔に言えば、アベノミクスとは戦時経済と同じ“出口のないネズミ講”なのである。
つまりあと3年は、安倍首相に「政治任用」された黒田日銀総裁が緩和政策を続けるのかもしれないが、それは将来の大きな危機をもたらす「マグマ」をため続けるようなものであり、米FRBが利上げ政策をとっている以上、日銀だけが緩和政策を続けようとしても、金利上昇を抑えられるかはわからない。
こう考えると、アベノミクスとは、成功した途端に破綻する「詐欺」ということになる。
仮に消費者物価が上昇した場合、それは金利の上昇をもたらす。実質金利(利子率―物価上昇率)がマイナスだと、銀行経営は成り立たなくなっていくからだ。つまり、異次元緩和のアベノミクスは永遠にデフレ脱却をせず、不況でないともたない政策であり、現状をただもたせるだけの政策なのである。
● 金利は上昇する 日銀の金利抑制も限界に
実際、政策の限界はすでに表面化し始めている。
銀行は超低金利が長く続くなかで収益が悪化、経営体力を弱めている一方で、海外の金利上昇圧力を受けて、日本国債離れが進んでいる。国債市場は2018年に入って、7回も国債の取引が成立しない事態が生じている。こうした「副作用」を和らげるために、日銀は7月末の政策決定会合で長期金利(10年債の利回り)の上昇(0.1%から0.2%)を容認する金融緩和の一部修正を行った。ところが、さっそく金利上昇を見越して投機筋によって乱高下する事態となった。長期金利が0.11%になった状況で、日銀が0.1%の指し値オペ(指定金利で無制限に国債を買い入れ)を行うやいなや、日銀の国債貸しを利用して、投機筋が「空売り」を仕掛けたのである。
投機筋 は日銀から1兆円の国債を借り、それを空売りして濡れ手で粟の儲けを得たのだ。株式市場でも日銀が株式を買い支える「官製相場」になっており、株価が下がると日銀が買いに入るのを見越して、投機筋が同じように空売りで儲けている。中央銀行が株高・低金利を維持するために、投機筋の空売りの機会を提供するという異常な事態が生じているのである。
以上は「東洋経済」誌よりの抽出である。
「簡潔に言えば、アベノミクスとは戦時経済と同じ“出口のないネズミ講”なのである」とあるが、「長期的に考えれば、国の借金は1000兆円を超えるので、単純計算で考えても、金利1%の増加でさらに国債費は膨らみ、財政危機をもたらす」とあるのは、正論である。わが業界は、親亀の背中の子亀である。ネズミは船の難破するのは事前に知って逃げ出すという。そういうことも、あるか。ネズミの天与の知恵である。
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