慢性病にもよく効く運動療法としての太極拳
慢性病の多くは、安静だけでじっとしているのはかえって良くありません。自分の体力に合わせて体を動かす方が治りが早いものです。「太極拳」も含めて気功と医療としての運動は、中国に何千年と伝わってきました。安静休養(心身のリラクゼーション)と呼吸運動を結合した健康体操法として、「気」(呼吸)を訓練する工夫ともいわれ、一般的な慢性病に適しています。
運動療法は「長期系統的」に行うことが重要です。これによって筋肉強化、関節の活動範囲の増大、さらに心臓や肝臓の機能向上が徐々に得られるのです。あせっては鍛錬にはならず、量的な積み重ねによって効果をより上げることができます。また、一昔前、健康な人びとを相手の医療は重要視されていませんでしたが、現在では大病とは縁遠いと考えられる人でも、「予防」に関心を寄せはじめています。これも高齢化の時代であり、避けて通れないテーマです。
1.運動不足の解消
現在多くの人びとが、慢性的な運動不足になっています。「健康で快適な生活を送るには」日常の生活の中にスポーツや運動をする時間を意識的に作っていかなければなりません。しかし、急に激しい運動を始めると、怪我や心臓病などを起こす危険性があります。「大極拳」は、ゆっくりと全身の筋肉や関節を動かすためその「危険性がありません」。
2.老化防止
「足と腰」は人間にとって一番重要な場所といわれています。足腰の強化は単に階段の昇り降りを繰り返すことでも養われます。太極拳はそのような「単純な苦痛」を伴わずに、時には集団で、時には一人でも楽しみながら効果を得ることができます。太極拳は運動生理学から言いますと、中腰姿勢が多いことから「老化防止」には最適であると言われています。
また、1)足を鍛えるのに理想的 2)姿勢が良いので生理機能を高めるばかりでなく、見ていても美しい 3)終始ゆっくりゆっくり繰り返される大きく柔らかい動作と深い呼吸は、激しい運動を行うより優れた「呼吸健康法」で、しかも永続性と安全性を考えると「運動不足解消」の最たるものといえます。
定年退職の人などによくある例ですが、定年により1ヵ月もぼんやりしていると、「足腰が駄目になり次第に頭もボケてくる」といわれています。よくいわれるように「仕事による責任感 から解放されたからボケた」というのは俗説です。
太極拳が「なぜ足腰を鍛えるのに理想か」といいますと、足腰を鍛えることにより、足の筋肉が持っている血液に対するポンプ作用が活性化され、心臓・血管壁さらに筋肉の収縮に対応する静脈弁の働きが活性化するということです。
運動不足ですと老人のポンプ役は心臓だけ、若い人・働き盛りの人は血管だけといわれますが、とくに仕事だけの中高年層の循環機能の衰えを防ぐ方法は、「運動と食事」しかないといっても 過言ではありません。足腰を鍛錬するということは以上のように血液循環機能、とくに中心である「心臓機能を高める」ことに繋がるわけです。
3.慢性病の運動療法
慢性病の中で多くのものは、安静だけを心掛けてじっとしているのは、かえって良くありません。「自分の体力に合わせて体を動かす方が治りが早い」ものです。
太極拳も含めて気功と医療運動は、中国に何千年と伝わってきました。安静休養と呼吸運動を結合した、「健康体操法」として「気」(呼吸)を訓練する工夫ともいわれ、一般的な慢性 病に適しています。
重要なことは、運動療法は「長期系統的」に行われなければなりません。これを心掛けることによって「筋肉強化、関節の活動範囲の増大」、さらに「心臓病や肝臓の機能の向上」が 徐々に得られるのです。決してあせっては鍛錬にはならず、「量的な積み重ね」によって効果をより上げることができるのです。
1)高血圧
一般的に、肉体的な労働に従事する人やスポーツマンの高血圧症の発症率は、他の人の「1/3程度」といわれています。発症時期も年齢にして「10~15年も遅い」といわれています。「なぜ太極拳によって高血圧を治せるか」といいますと、太極拳の動作は柔らかく姿勢はゆったりして、余分に緊張して力を使いませんから筋肉は弛緩します。この「筋肉の弛緩が反射的に血管の弛緩を引き起こし、血圧を下げるからです」。専門的には、筋肉運動を通して大脳皮質を刺激し、血管の収縮や弛緩を調節する神経中枢の活動を正常に近づけ血圧を降下させます。
また血管と筋肉の関係では、運動により血管が弛緩するので降下します。筋肉の収縮からみると、ヒスタミンなど僅かではありますが化学物質が生まれ、これが血管内に流入して血管拡張の作用をして降下します。また、「狭心症や低血圧症などの循環器系の病気」についても、太極拳の動きがゆっくりしていることから、「心臓病や呼吸器管に負担がかからないので、高血圧症と同様に有効」です。
2)糖尿病
「糖尿病は年齢と共に増加する老人病」です。一般的に運動によって血糖値の低下・インシュリン受容体の増加があり、インシュリンの効果増大をもたらします。つまり体の組織の糖分利用を促進させます。
「太極拳を30分する」と血糖値が減少し、糖分・多尿などの症状を軽くさせる効果があります。また、患者の自覚症状も軽くなり、「関節の痛み、皮膚のかゆみ、便秘などの症状」もなくすことができます。太極拳をおこなっても良い糖尿病患者は、軽・中症の人であまり衰弱していない人です。行い方は「体力に応じ毎日続けたほうが効果があります」。以上のことは「膵臓系統の患者」にもいえます。
3)呼吸器系
太極拳を行うことによって、呼吸機能の増進は目をみはるものがあり「肺活量が増え」ます。実際におこなうに当たっては、運動量の多いものが良いのは当然です。しかし「呼吸機能の弱い人にとっては適しません」ので、激しい運動は避けて実際の「体力・状況に応じて」徐々におこなう方が良いと思います。太極拳は比較的簡単にでき、季節や場所の制約を受けずに繰り返し一人でも鍛錬できる手軽さも魅力です。「喘息や気管支炎」などの呼吸器系統の病気には当然有効です。
4)慢性肝炎
太極拳をおこなうことによって、慢性肝炎患者や肝炎後遺症の人がもっている「不眠、緒低下などの神経症の症状を軽くする」のに役立ちます。また腹腔の血液循環を活発にし、肝臓のうっ血を軽くし、「食欲を増進し、消化や吸収機能を改善する上で効果」があります。慢性肝炎などのうち、肝機能が正常な人や自覚症状が明らかでない人は、運動することで「全身の健康状態を改善」し、全快へ向けて日常活動に耐える力を向上することができます。「慢性胆のう炎、胆石の予防治療」にも適し、体力の消耗の少ないゆっくりとした動作で、できるだけ「腹式呼吸」を心掛けると良いでしょう。
5)動脈硬化
動脈硬化に対する太極拳の医療効果は、一つに「動脈硬化を一段とよく予防」できます。二つ目は「血液循環を改善」し、局部の血液欠乏によって現れる症状を、より改善出来るという長所を持っていることです。肉体的な労働をしている人や通常運動をしている人」は、例え動脈硬化になっても「比較的に軽い」ものです。
しかし、運動をしていない人の「動脈硬化の殆ど(約70%)」は、冠状動脈閉塞にまで 進んでいることが多いのです。冠状動脈とは、心臓の周囲にあって心筋の栄養を維持するために重要な動脈ですから大変です。太極拳を行うことにより、精神の緊張を緩和出来ることから、血管のけいれんが軽減できます。また、「動脈硬化の進み方はコレステロールの代謝異常と密接な関係」を持っていますが、「血中のコレステロールの含量を下げる」のに役立ちます。動脈硬化は高血圧症とほぼ似ていますので、「体力に応じて太極拳をおこなえば良い」と思います。
予防医学と太極拳
ガンや動脈硬化などは、すでに10代から始まっているといっても過言ではありません。30~40年かかって病気になる長期戦です。厚生労働省が予防のポイントを栄養・運動・休養(心身のリラクゼーション)としているように、ライフスタイルを変えることが重要とされています。
日本人の多くは慢性的な運動不足を抱えています。人の筋肉はしっかり鍛えていないと30代を境に弱くなり始め、加齢に伴い筋力は著しく低下していきます。これが高齢者の転倒、骨折、寝たきりなどの一番の原因と考えられています。
太極拳は、中腰姿勢が多いことからも老化防止には最適であるといわれています。そして、①足腰を鍛えるのに理想的、②姿勢が良いので生理機能を高めるばかりでなく、見ためも美しくなる、③終始ゆっくり繰り返される大きく柔らかい動作と深い呼吸は、激しい運動を行うよりもすぐれた呼吸運動法であり、しかも永続性と安全性を考えると運動不足解消の最たるものといえます。
日本人のための太極拳入門 / の第2部朝香禎之(医学博士)著部分を参考
とくに高血圧と糖尿病をもつ君の場合は、血管ポンプ運動としての太極拳を強く勧めます。また「気」をイメージすることがポイントで、それにより瞑想効果も得られ、日々の運動が苦痛な作業から身体的精神的な快感にかわるのです。
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