アベノミクスだとか

 よく中小企業経営者とお茶をする。政権交代した。その新政策への反応は、たとえば不動産業者と製造業者では違う。不動産業者は、じつは眉に唾をつけながらも、たとえ短期でも上昇が見込めるとの期待感を持っている。この20年、日本経済は低迷をつづけた。何かが起こってほしいのだろう。製造業は、このアベノミクスなる、レーガノミクスをまねたであろう造語に、かなり不安を感じているようである。事業主でなく、ふつうの人と話すと、株を今のうちに買えば儲かりますね、などと言っている。

 株価があがっているって! ケインズが「一般理論」でいっているが、株価は美人投票のようなものだと。自分が美人だと思う相手に投票するのではない、チャンピオンになれる女性に投票するというゲームである。したがって、みんながどうするか? みんなが投票する相手をあてて、彼女に投票するのである。所詮、株式市場は賭場なのだ。短期的には実体経済とはかかわりなく、株価はジグザク運動をする。「結局のところ、株価なんて酔っ払いの千鳥足みたいなもの」と、株取引のバイブルといわれる「ウォール街のランダム・ウォーカー」で言ったのは、経済学者のバートン・マルキールである。

 財政政策と金融緩和と成長戦略が三本の矢だそうだが、そうはいくだろうか? とりあえず「円安」誘導政策だが、すでにアメリカ等より近隣窮乏策であるとして批判が出ている。国内しか見ない文化習性だが、他国も対抗する為替政策をとり、為替戦争になるのか。

 だが、株価上昇も円安も、それ自体は景気拡大を意味しないはずである。この月末にバンコクに行く予定だが、輸出業は円安で一息するかもしれない。だが、円をバーツに変えねばならないわたしはこまる。原材料を輸入する産業は、みな困るだろう。石油、穀物もあがる。市民生活は、これは窮乏化するしかないはずである。円安がよいグループと、円高がよいグループがあるのに、新聞等の論調は、円安歓迎だけである。つまり、失われた20年と同じ論調で事を論じている。

 日本は、輸出と輸入が均衡している為替中立である。したがって、円安になっても、円高になっても、プラスマイナス・ゼロのはずである。それでころか、貿易赤字が定着するようになると、つまり円安により、さらに輸入額が増えることになり、国内経済と国家財政におおきな負担となるはずである。

 金融政策や財政政策で景気回復などできないのは、それは世界で実験済みだ。実体経済をどう復活させるしかないはずだ。だが、成長戦略は、このアベノミクスではないようである。国土強靭化計画は、要するに保守工事であり、道路や交通網の新設ではない。乗数効果、経済効果は見込めないはずである。ふるい自民党的土建屋政治の復活としか思えない。

 規制を撤廃し、高額所得者に対する増税ではなく、逆に法人税の大幅現在、産業支援政策をとり、日本経済自体を抜本的に改革するしかないのに、所得税の増額、相続税の増額、まるで反対のことをしている。かって、税率の安い発泡酒が人気だっだ、税収の為か、発泡酒の税率をあげたら誰も飲まなくなり、発泡酒の税収が落ちたという落語話しがあるが、またまた繰り返されるわけだ。

 わが社はサービス業に分類されるであろうから、内需産業である。これは円安で打撃をこうむる。金融を緩和しても、すでにどの銀行も貸出先にこまっているようだ。日銀に国債を買わせるだけのことになるのか。円安により利益を得る企業群は、大手である。国内の一般の中小企業は、材料費の高騰などで打撃を受けるだろう。市民生活も、給料は上がらないのに、物価があがることになる。そんな政策、誰が嬉しいのだろう。

 まずは、日本経済の構造改革が必要なのに。人口動態、企業の国際競争力の低下、巨額の財政赤字などの抜本的に改革が必要なのに、お札をじゃんじゃんすれば問題解決とは、いくらなんでも。お札をじゃんじゃんするとは、われわれの預金の価値が減損し、ある意味、それは隠れた増税になるのに。つまり国により国民の富の簒奪になるのに。

 わたし的関心としては、社会保障制度の維持可能性、そして融資を受けているので、変動金利の動向がとくに気になるが、しかし、わたしは元々「逆バリ」志向が強い。
それに「景気が良くなって物価が上がる」という話しなら、ああそうかと思う。だが、「物価が上がると景気が良くなる」などという話しは、それは有り得ないだろうと普通に思う。阿部首相のブレーンといわれるエール大学浜田教授の本を読んだ。これはひどい、というのが読後感である。あほな。

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